皮膚科


足の皮膚病

 この文章が読まれるころは既に涼しくなってきているかもしれませんが、執筆しているときはちょうど梅雨が明け夏真っ盛りで水虫の多い季節です。
 水虫とは白癬菌というカビの一種の感染によって発生します。₁年を通して水虫の患者さんはいますが、梅雨から夏にかけて悪化することが多い病気です。一言に水虫といっても見た目ではさまざまな症状を来します。指の間がじゅくじゅくするもの、皮がむけてくるもの、小さな水膨れができるもの、足の裏が硬くなってガサガサになるもの、爪に菌が入って爪が厚くなったり白くなったりするもの。放置しておくと他の場所に広がったり、爪がはがれたり、変形して食い込んできたりすることもあります。
 あまり強い症状が出ないために放置している方もたくさんおられますが、自然に治ることは期待できず、家族を含め人に感染する可能性もありますので、できればしっかり治療をしておきたい病気です。
 治療には外用剤や内服薬があり、根気よく外用を続ける必要がありますが、しっかり治療すると完治することが可能な病気です。近日中には爪白癬に対する外用薬も新しく出る予定になっています。
 また、同じような症状が出現しても水虫ではないこともあります。異汗性湿疹という湿疹病変や掌蹠膿疱症、疥癬、手足口病などでも一見同じような症状が見られます。これらの病気は水虫とは全く治療が異なってきます。足に病変が出現したときは自分で水虫と決めつけずに、一度皮膚科を受診してみてください。

平成26年10月 徳丸良太


皮膚は内臓病変を映し出す鏡

 最近マスコミの影響からか「私の皮膚病は内臓の病気と関係あるでしょうか」と心配して来院される方が多いです。内臓を反映する皮膚病は大きく1赤み(紅斑)、 2しこり(結節)、 3ゴワゴワ(角化症)、 4水ぶくれ(水疱)、 5えぐれ(潰瘍)に分けられます。
 1の赤みは、顔、手、背中に痒く赤い斑点が多発する皮膚筋炎という膠原病の一種ですが、その一部は肺がん、胃がんを合併します。
 2のゴツゴツした結節を呈する一群の中で、多型慢性痒疹やアミロイド沈着症では胃がんや骨髄腫の併発が、また老人イボが全身に短期間で多発するレーザートレラー症候群では消化器がんの併発をみます。
 3のゴワゴワ(角化症)の中で、手のひらや足裏がゴワゴワ硬くヒビワレの起こるバゼックス症候群、腕の脇やそけい部に黒く厚い角化の起こる黒色表皮腫では、高率に咽頭食道がんを生じ、また手足が乾燥した魚のウロコ状になる魚鱗癖の一部は、悪性リンパ腫の併発をみます。
 4の水ぶくれ(水疱)としては、口の中や唇、全身に多数の水疱やびらんをつくる天疱瘡という病気があり、肺、食道のがんを高率に合併します。また痛みのある水疱を生ずる帯状疱疹(帯状ヘルペス)では、もし水疱が左右両側に出たり全身に散布される汎発型になると、免疫の低下が予想され内臓悪性腫瘍の合併が疑われます。
 5のえぐれ(潰瘍)としては、下肢の破壊的にくり抜いたような痛みのある潰瘍をつくる壊疽性膿皮症という皮膚病で、しばしばクローン病、潰瘍性大腸炎、白血病を合併します。
 皮膚病変を見てその背景に内在潜在するがんや全身疾患を類推することは、かなりの熟練を要します。何でもないものをむやみに心配しても無駄ですし、一方ただの日光カブレかウルシなどの植物カブレと思っていた紅斑が実際は皮膚筋炎だったこともあります。心配な場合は皮膚科専門医にご相談ください。

平成25年5月 鈴木裕介


ヘルペス知ってますか

 一般にヘルペスといいますが、唇や陰部にできるものを単純ヘルペス、胸やおなかにできるものを帯状疱疹と呼び、2種類あります。
 私たちが調べたところ30年前に今治(島しょ部)では神経痛の花とか、袈裟懸けと呼ばれていたそうです。
 水ぼうそうのあとのウイルスが脊髄に入り込み、ストレス・過労などが引き金となって身体の右側または、左側にでてきます。両側にできることはまれです。
 若い人は早く治りますが、50歳以上ではひどい神経痛が残ることがあり、早く抗ウイルス剤の内服や軟膏を使うことが大事です。生後6か月を過ぎた水ぼうそうの出ていない幼児と接すると水ぼうそうが出る可能性があるのでヘルペスが治るまで(約2週間)は接触を避けてください。
 広範囲に広がったり、痛みの強い場合は、8時間ごとの点滴を一日3回(5日間)行うこともあります。この場合は入院が必要となります。
 神経痛が残った場合は、体力に応じて漢方薬や少し強めの鎮痛剤を使います。それでも痛みが残るときには、神経ブロック(ヘルペスの出ているところに該当する神経の近くに局麻剤を投与)を行うこともあります。
 この神経痛は現在でも難治でなかなか決め手となる治療法がないのが実情です。とにかく湿疹にしては痛みが強い場合、あるいは2、3日で急速に広がってくる場合は医療施設に相談してください。

平成24年3月 田中重三


カサカサ肌と皮膚(角層)バリア

 滑らかに触る皮膚の約0.2ミリメートル内側の世界では、体を守る薄くて丈夫なバリアを作るため、常に新しい細胞を作り、レンガのように細胞を積み重ねながら、約30日かけてその材料を作っています。そして、皮膚表面では、約10層の死んだ細胞のレンガ・その中の天然保湿因子・その周囲の脂質(皮脂・セラミドなど)からなる食品ラップ程の厚みの角層バリアが、体の水分を逃さず、細菌やアレルゲン(ダニや食物など)を入れないよう機能しています。この健康な皮膚機能を保つためには、毎日、バランスのとれた食事・十分な睡眠・適度な運動・ストレスや疲れをためない生活で体の健康を保つ事や、スキンケアとして、角層 バリアの細胞が約2週間機能した後はがれる垢・余分な皮脂・皮膚表面の汚れを泡の洗浄力で優しく洗い流し、角層に潤いを補う保湿剤を1F TU (大人の手の平2枚分の面積に0.5グラム)の量でぬることが大切です。
 保湿剤は、女性用・男性用・赤ちゃん用・ 乾燥肌用・ニキビ用・アンチエイジング用などさまざまありますが、成分が体質に合わず、かぶれ・かゆみ・乾燥(カサカサ)などの皮膚トラブルを起こす事があります。また、皮膚トラブルを治すための外用治療薬も、手軽に入手でき数日で治癒するのに役立っていますが、適切でない外用薬を用いていつまでも治らない場合もあります。
 外用薬(保湿剤・化粧品・ 外用治療薬)で数日しても治らないかゆみ・カサカサ・じくじくは、角層バリアが破壊された状態かもしれません。天然保湿因子のもとであるフィラグリンの遺伝子変異などにより皮膚バリアが弱く皮膚炎を起こしやすいアトピーや、皮膚が薄くバリアの弱い子どもや高齢者、毛穴では角質が詰まり角層では保水機能の低下したニキビなども含め、皮膚 でお困りの方は皮膚科専門医にご相談ください。

平成24年2月 大西祐子


足の水虫はなぜ治りにくいのか

 水虫は白癬菌というカビが皮膚にくっついておこる病気です。水虫を治す薬を発明したらノーベル賞ものだといわれたことがあるくらい水虫は治りにくいのが実状です。その理由を考えてみましょう。
 第一に足の皮膚病変が本当に水虫なのでしょうか。自分で水虫だと思っている人の3分の1は水虫ではないといわれています。水虫でないものにいくら水虫の薬を塗っても治ることはありません。皮膚科医に診てもらって、顕微鏡で調べてもらい水虫かどうかを確認してから治療を始めましょう。
 第二は治療を始めて、少しよくなりかゆみが無くなったら治ったと思い自分の判断で治療を中止してしまうことです。8割から9割治っていても、1割か2割残っている時に治療を中止すると必ず再発します。多くの患者さんはかゆみが無くなったら治ったと思い治療を中止しています。かゆみが無くなるとともに皮膚も完全にきれいになるまで治療を続ける必要があります。
 第三に爪の水虫があるかどうかを検討する必要があります。爪の水虫では白癬菌が爪の中に入り、爪の色や形がおかしくなります。これも顕微鏡で検査をしなければなりませんが、爪水虫がある場合は爪水虫も治さないと水虫も完全には治りにくいのです。水虫が治っても爪からのカビがまた足の皮膚にくっついて水虫を引きおこすからです。
 昔と違って現在は、効き目の優れた薬がつくられています。治そうという強い意志をもって、皮膚科医と相談しながら治療をすれば必ずよくなります。

平成23年2月 徳丸 伸之


帯状疱疹について

平成21年7月 今井 健

 帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれ(水疱)が神経に沿って帯状にあらわれる病気です。胸部から背中にかけて最も多く見られますが、頭部から顔面や、下肢から足にかけてなど、身体中のどこにでも発症し得る病気です。一生涯のうちに一回以上帯状疱疹に罹患する人の割合(生涯罹患率)は6~7人に1人といわれており、決して珍しい病気ではありません。通常は生涯に一度しか発症せず、免疫が低下している患者さんを除くと再発することは稀です。
 帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じウイルスが原因で発症します。子どものころに水ぼうそうにかかると、治った後も水痘ウイルスは、長い間、脊髄の神経の中に潜伏しています。疲れやストレスなどでからだの抵抗力が落ちて、ウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到着し、帯状疱疹として発症します。同じ帯状疱疹でも、発疹が全く出ず、神経痛だけを生じる例があり、この場合は診断が非常に困難となります。
 治療は、抗ヘルペスウイルス薬および痛みの程度に応じて消炎鎮痛剤などの内服薬が中心になります。また、頭部から顔面の帯状疱疹、および発疹が広範囲で痛みの非常に強い方の場合は、合併症(角膜・結膜炎、耳鳴り・難聴、顔面神経麻痺など)・後遺症(帯状疱疹後神経痛など)の予防のために、入院可能な施設へ入院の上、抗ヘルペスウイルス薬の点滴投与を行ったほうが望ましい場合もあります。帯状疱疹を疑った場合は、まずお近くの皮膚科を受診することをお勧めします。


増加中の皮膚感染症…疥癬(その2)

 前回は、疥癬における日常生活の注意事項をお話しました。今回は治療についてです。
 治療としては、イオウ、チアントール、ムトーハップ、安息香酸ベンジル、オイラックス、ガンマBHC などの外用剤がありますが、これらは痒み止めではなく一種の殺虫剤、農薬に分類され、皮膚に刺激があり大量に使うと神経毒になるものもあるので、漫然と毎日塗るのはよくありません。ふだんよく使うオイラックスですらそうなのです。3日塗って4日休むことを3回やって後は止めるようにしましょう(ガンマBHCは1、2回のみ)。そうはいっても何か月も痒いのが出てきて治ってないのではないかとよく質問を受けます。実は、疥癬虫が死滅してもその菌体のかけらが皮膚に埋め込まれていて、それを皮膚がアレルギーと感じるので痒いのです。この段階ではアレルギー性の皮膚炎の状態ですから、ふつうの痒み止めの内服、外用でよいのです(ただしステロイドを使うかどうかは専門医に聞いてからにしてください)。最近イベルメクチン(ストロメクトール)という内服薬が開発されました。1回内服し、7日後もう1回内服します。お年寄りでも飲め、全身に外用剤を塗る手間が省けて飲むだけでよいので便利なのですが、まれに肝臓障害、脳神経障害を起こすので、乱用せず慎重に使います。
 疥癬とわかってもパニックにならず地道に治療の努力をすること、また違う皮膚病を疥癬と思い込んでいるケースもあるので、きちんと診察を受けてから治療を始めましょう。

平成20年5月 鈴木裕介


増加中の皮膚感染症・・・疥癬(その1)

平成20年4月 鈴木裕介

 近年、保育園の園児どうし、老人施設の入居者から医療関係者や家族へと、多くの人々が集団感染する、ヒゼンダニによる疥癬という皮膚感染症が増加中です。
 まず、いずれはちゃんと治るのですからパニックに陥らないこと、次に本人および長期間接する家族や医療関係者みんなで一斉に治し始めることです。潜伏期間1か月なので治療は発疹のない人も含めて行います。
 疥癬には2種類あり、多くの場合「ふつうの疥癬」です。これは顔を除く全身に細かく赤いポツポツが無数にでき、特に夜間痒いもので、専門医で虫体か虫卵を認めたら治療に入ります。ただしこのとき過剰に防衛しすぎないことです。例えば、日常生活において、個室への隔離、部屋に入るときの予防衣や手袋、床の殺虫剤散布やふとんの消毒は必要ありません。またシーツや寝具の交換、入浴方法、部屋の掃除などはいつも通りでいいのです。唯一、介助者は手洗いを、洗濯物を運ぶときビニール袋に入れることくらいです。そうでないと負担が大きくみんな疲れ切ってしまいます。
 もうひとつの疥癬は、角化型疥癬(ノルウェー疥癬)といって、頻度は少ないですがたいへん感染力が強いものです(皮膚の断片に触っただけで感染します)。免疫力の落ちた寝たきりのご老人の全身または一部の皮膚がザラザラし、やっかいなことに痒みがありません。このときは先ほど述べた隔離、殺虫剤、消毒、入浴などで特殊な措置が必要です。このように日常の注意事項が「ふつうの疥癬」とはあまりに違うため、専門医で両者を区別してもらう必要があります。集団発生で困っている場合、もともと一人、このノルウェー疥癬の人がいたのに気付かなかった可能性があります。というのも「ふつうの疥癬」では、どちらの人も免疫力が正常にあるので、短時間患者の手を握ったり抱き起こす程度ではうつりにくいからです(長時間接する人は別です)。
 次回は、疥癬の治療薬、治療方法について述べます。


夏のお肌のダメージケア

 紫外線、汗や皮脂、冷房などの影響でこの季節のお肌は思っている以上に傷ついています。春先から増え始めた紫外線量は6 月~ 7 月にピークとなり、フロンガスの増加によるオゾン層破壊のため、地球に到達する紫外線量が年々増加してきています。紫外線にさらされると、シミやシワなどが増え、お肌の老化の大きな原因となります。正しい紫外線対策とスキンケアで傷んだお肌を早めに回復させ、ダメージを蓄積しないことが大切です。紫外線量の多い午前10時から午後2時の外出を避ける。長袖シャツの着用。露出部にはサンスクリーン剤を塗る。帽子をかぶるなどを忘れずに実行しましょう。ダメージケアとしては、ビタミンCやビタミンAを日常のスキンケアに取り入れ、お肌の新陳代謝を促し、肌本来の正常な機能を回復させることが効果的です。ビタミンCにはシミを作りにくくする、薄くするなどの効果や、活性酸素を除く作用などがあり、ビタミンAには傷んだ細胞を正常化する作用、天然保湿因子の増加作用、コラーゲンの生成促進効果などがあります。ビタミンCは安定性、吸収性の良いビタミンC誘導体という型のものが良いでしょう。皮膚には角質層というバリア機能層があるためこれらの有効成分も吸収されにくいため、深部まで吸収させる方法として、イオン導入法や超音波を用いる方法もあります。夏は汗や皮脂の分泌が増えるので、正しい洗顔法で清潔に保ち、その後は必ず保湿ケアを行うことも大切です。また冷房の効きすぎた部屋も美肌には大敵です。血流や代謝が悪くなり、クスミ、肌荒れ、ムクミなどを引き起こします。冷え対策、乾燥対策も忘れずに心がけてください。

H17年8月 久保 映子


帯状疱疹について

 皇室の美智子さまや雅子さまが罹患(りかん)され、報道によって耳にされたこともあるかと思いますが、今回は帯状疱疹についてお話しましょう。
Q.帯状疱疹ってどんな病気?
A.帯状疱疹は大人の10~20パーセントがかかる比較的ポピュラーな病気で、子どものころにかかった水痘(みずぼうそう)のウイルスがからだの中に何十年も潜んでいて、体力が低下したときなどに起こってきます。
Q.症状は?
A.最初の症状は、からだの左右どちらか片方に、神経の流れに沿って帯状にチリチリとした痛みが起こります。しばらくするとその痛みの部分に赤い斑点や水ぶくれが生じ、その後は水ぶくれの部分が枯れて、黒いかさぶたになり以後徐々に消えていきます。このとき水ぶくれやかさぶたを掻いてつぶさないようにしましょう。しかし治療の開始が遅かったり、中途半端な治療であったりすると、激しい痛み(帯状疱疹後神経痛)が数年に渡り残ることがあるので、できるだけ早く治療を開始するようにしましょう。特に頭皮にできて高熱や頭痛を伴ったり、顔面にできたりしたときには脳炎・髄膜炎や難聴、めまい、顔面神経麻痺などを来し、重症化することもあるので速やかに医療機関を受診してください。早期の適切な対応で重症化は防げます。
Q.どうやって治療するの?
A.近年は抗ウイルス薬の良い薬が開発され、外来で内服薬、外用薬だけで済む場合もあれば、1週間程度の入院を必要とする場合もあります。
Q.帯状疱疹ってうつるの?
A.帯状疱疹が人にうつることはほとんどありませんが、まれに水痘になっていない人と接触すると伝染することがありますので、まだ水痘にかかっていない赤ちゃんや妊産婦さんおよび免疫力の低下している人などとの接触は控えましょう。

H16年6月 亀井 將子


肌あれ対策にはスキンケア

 春は、受験・就職・引越・進学など行事が多く、何かとあわただしい季節です。いつの間にかお肌があれてしまったという方も多いのではないでしょうか?
 肌あれは、不規則な生活やストレス、乾燥などによって起こります。また春の紫外線と花粉も要注意です。紫外線量は3 月から急増し、4 月には8 月と変わらない程多くなります。花粉は、花粉症だけでなく目のまわりなど顔の湿疹も起こします。
 肌あれ予防には、何よりスキンケアが大切です。まず①皮膚を清潔にしましょう。汗や汚れを落とすため、帰宅後には洗顔や入浴をし、手と泡で優しくなで洗います。脂性ニキビ肌の方はピーリング剤で1 日2 ~ 3 回洗顔するとよいでしょう。次に②お肌の保湿を心がけましょう。入浴直後は全身に、お子様のよだれ・食べこぼし・ウンチをふくたびにもこまめに保湿剤をぬりましょう。③ストレスを減らすため、十分な睡眠とバランス良い食事をとり、趣味などで積極的に気分転換をはかりましょう。④紫外線対策には帽子や日傘、日焼け止めが有効です。⑤掻きキズを作らないためにこまめに爪も切りましょう。
 アトピー性皮膚炎の方は、ついつい「掻く」ことが心地よいストレス解消になりがちです。しかし掻くことは湿疹を悪化させるのでよくありません。アトピーのお子さまをお持ちのお母さまは「掻いちゃダメ」と叱らずに、かゆみが遠のくまで優しくなで、ギュッと抱きしめてあげましょう。夏以外でも、掻きキズがじくじくしてくる「とびひ」もおこりますし、抗生剤が効きにくい菌もあり要注意です。
 もし、湿疹やニキビなどが悪化してきたら必ず治療が必要です。悪くなる前に早めに皮膚科専門医に相談し、一緒に予防していきましょう。

H16年3月 大西祐子


美しい素肌のためのスキンケア

 ニコビ、シミ、くすみ、たるみなどが、気になっていませんか。正しいスキンケアを身につけ、皮膚の老化の原因を知り、適切な治療法を実行することにより、美しい素肌になることができると考えます。ここでは、主にニキビについて述べさせていただきます。
 ニキビの始まりの皮疹は面ぽう(コメド)です。コメドは毛穴に皮脂が詰まったためにできる粟粒大ぐらいの皮疹で、皮膚と同様の色のものと、黒く見えるものとがあります。この毛穴の中で常在菌が増殖し炎症を引き起こすと赤い丘疹となり、さらに他の細菌も二次感染すると化膿したニキビとなります。ここまで悪化する前になるべく初期の段階で治療したいものです。ニキビの主な原因は、皮脂の過剰分泌と、角質が厚くなり毛穴が狭くなることですので、皮脂と角質に対するケアが必要です。皮脂に対するスキンケアは、まず洗顔です。朝夕2回程度、石鹸をよく泡立てて、ぬるま湯でやさしく洗いましょう。角質ケアで大切なのは、紫外線に注意することです。紫外線により皮脂が過酸化脂質となり、炎症が引き起こされ、毛穴が角化し詰まりやすくなるからです。シミ、シワ、たるみの原因の多くも日光によるダメージです。紫外線のうち、UVAは雲や窓ガラスも通過し皮膚の影響を与えますので、年間を通じての紫外線対策が必要です。
 また最近、紫外線や大気の皮膚への影響に対し、皮膚から直接吸収可能なビタミンCとして、ビタミンC誘導体によるスキンケアが注目されており、ニキビやシミ、皮膚の若返りに効果が期待できると思われます。

H13年12月 久保映子


やけどについて

 やけど(熱傷)とは、熱が加わったための体表面の損傷をいいます。一般によくある原因として熱傷、火焔、竜撃、化学薬品などがあります。
 熱傷による障害部位はおもに皮膚ですが、その探さや範囲により全身におよぼす障害の度合いが違ってきます。
 一番浅い場合(Ⅰ度)は皮膚が赤くなるだけですが、もう少し深くなると(Ⅱ度)水ぶくれができ、さらに深くなると(Ⅲ度)硬い、あるいは黒く炭のような皮膚になります。Ⅲ度になると知覚神経の損傷を伴うため、痛みはかえって少なくなりますが、傷あとが残りやすく治療に要する期間も長くなります。
 また範囲については、広範囲なものほど全身におよぼす影響が大きくなり、体表面積の1/3以上であれば生命の危険が大きくなります。さらに小児や高齢者では皮膚が薄いためより重症の熱傷になりやすいので注意が必要です。
 もう一つの問題点としては、熱傷をおった皮膚は、細菌などに感染しやすくなることです。もし感染すると熱傷の探さがより深くなり治療が難しくなります。
 もし熱傷がおった場合は、衣服はそのままにしてまずその部分を冷却(水道の流水または清潔な氷水中に出し入れする。)し、すぐに医師の診察や処置を受けてください。範囲が広い(10%以上)と思われる時や、熱風を吸い込んだ場合には急いで病院へ搬送することも必要です。      

平成9.11.  赤坂秀司


アトピー性皮膚炎について(1)

 アトピー性皮膚炎は乳児期から始まり、徐々に拡大していく慢性の湿疹です。子供の頃にきれいになることもあれば、成人しても皮膚炎がひどいこともあります。また、最近では大人になって初めて、皮膚炎が出てくる人が増えています。
 皮膚炎の原因については、まだ詳しくわかっていませんが、多彩なアレルギー的要素と非アレルギー的側面があるといわれています。
 非アレルギー的側面としては、皮膚の潤いを保つ3つの物質-皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質-のうち、角質細胞間脂質が減少するため、皮膚の乾燥とバリアー機能の低下を生じ、そのためにアレルギーの原因物質(だにやほこりなど)であるアレルゲンの皮膚への浸入が容易になることや、易刺激性になると考えています。
 また、加えてアレルギーを起こしやすいアトピー素因を持つ人に、精神的・肉体的ストレス(受験、就職、残業など)を含めたさまざまな生活に関するものが悪化因子となり、アトピー性皮膚炎を引き起こしていると示唆されています。
 食物アレルギーの関与は、それ単独でアトピー性皮膚炎の悪化の主因となることは少なく、逆に過度の食物制限で成長障害を生じる場合があり、親子ともに過度のストレスが加わりやすく、また一般の治療でコントロールできる症例が多いため慎重に対応しなければなりません。
 アトピー性皮膚炎の治療の上でもっとも大切なのは、自分の病気の性質をよく知り理解した上で、普段よりスキンケアを正しく行うこと、症状にあった薬-皮膚炎がひどいときには強めの薬、症状が軽いときには弱めの薬-を内服したり外用し、患者さんごとに増悪因子を見極め積極的に治療を行うこと、そして家族の方の協力です。そうすれば湿疹のない状態にコントロールすることができるようになります。
 最近では治療に対するいろいろな俗説が流れています。このようなバブルのごとく消えていく治療法にどうか惑わされず、また、長期間つきあわなければならない病気ですので、お母さんや家族の方は一緒になって、イライラしないで、1日も早く皮膚科医にご相談ください。

平成8年11月  久保勝彦


アトピー性皮膚炎について(2)

 アトピー性皮膚炎では、皮膚の角質細胞間脂質(セラミド)が少ないことが知られており、そのため皮膚の乾燥とバリアー機能の低下を認め、アレルギーの原因物質(アレルゲン)の皮膚への浸入が容易になり、また外からの刺激に対して弱くなると考えられています。
 このことより、アトピー性皮膚炎では外用薬や内服薬で湿疹をコントロールしながら、生活上の上で注意しなければならない次のようなポイントがあります。
1.“かゆみ”を起こすようなあらゆる物理化学的刺激を回避すること。
①直接肌に触れるところは吸湿性の高い柔らかな木綿にすること。化繊、麻、羊毛などの刺激性の繊維などはさけること。寝具も木綿にすること。
 毛布、セーターで頸の皮診が悪化することがあります。また、木綿のものでも縫目のところにナイロンなどが使われてチクチクすることもあります。このようなときは、縫目を表側にして切るようにしてください。
②顔など日光に当たる部分は日光の刺激で悪化することがあり、食べ物でも刺激物や特にアルコールでかゆみが強くなり皮疹が悪化しますので注意をしなければなりません。
2.アレルゲンを除去すること。
 アトピー性皮膚炎ではだに、ホコリなどが悪化要因になるため部屋の掃除、天気の日はこまめに布団を干すなどアレルゲンの除去につとめましょう。
3.皮膚を清潔に保持することと乾燥からの防御のためのスキンケアを行うこと。
 皮膚の表面には、あかや汗などの老廃物、細菌、だにやホコリ、食べ物、花粉などさまざまなものが付着し、それらがアレルゲンや刺激となりアトピー性皮膚炎を悪化させます。そのためこの“よごれ”を入浴することで取り、皮膚を清潔に保たなければなりません。
 入浴方法としては、まず入浴石鹸(あわない人には低刺激性石鹸)をよく泡立て手で撫でるように洗ってください。よくナイロンタオル、たわし、へちまなどでゴシゴシする方がいますが、これは厳禁です。その後お湯でよく石鹸をすすぎ39度ぐらいのお湯に10分以上入浴してください。入浴剤は合わない人がいるので注意してください。入浴後は保湿剤をくまなく外用するようにしましょう。
 以上のような注意点は各々の生活環境でも違ってきますので皮膚科医に遠慮なくご質問ください。

平成8年12月  久保勝彦


接触性皮膚炎(カブレ)-植物によっておこる場合について-

 春になると、接触性皮膚炎の患者さんが増えてきます。接触性皮膚炎とは“カブレ”のことです。皮膚に何か刺激になるものが触り、皮膚炎をおこしたものです。
 今回は春にちなんで、戸外の植物が原因のカブレについてお知らせします。春にカブレが増える理由は、軽装で戸外に出る機会が多くなるからです。ピクニック、田畑の農作業、子供たち葉山や草むらを走り回ります。原因の代表的なものはウルシ、銀杏などですが、いろいろな植物でもおこります。なににカブレたかは、発疹が出る前にどこに行って、何に触ったかを考えてみればわかります。
 しかし、わからない場合も度々あります。多くの場合簡単に治りますが、農家の方などで、原因であるとはわからないままに、その植物に触り続けていると、慢性湿疹のようになり、治りません。そのようなときにはパッチテストという検査をし、原因を見つけてそれに触らないようにすれば治ります。
 症状は赤くなり、小さいブツブツや水ぶくれが集まって、触れた部分だけに出るのが特徴です。時には腫れたり、赤いブツブツがパラパラ散らばっていることもあり、強い痒みを伴います。
 治療は冷湿布をしたり、亜鉛華軟膏やステロイド軟膏を塗ります。痒みの強いときには抗ヒスタミン剤を飲むこともあります。いずれにせよ何が原因かを見つけ、それに触れない様にすることがポイントです。

原本平成6年6月  徳丸伸之


ヘルペスについて

 越智郡島しょ部や今治地方で古くから言い伝えられている「けさがけ」又は「神経痛の花」というのが、いわゆる「帯状疱疹」(ヘルペス)といわれるものです。
 袈裟(けさ)というのはお坊さんが身にまとう衣装で、肩口より前胸部にかけて袈裟をかけたように「ほろせ」が拡がってゆき、発疹の部分よりも痛みの範囲が広く、ひどい痛み方をするのを特徴とします。胸から腹部に出る頻度が最も高いのですが、顔(目も含めて)や手足にも(性器にも)案外とみられます。
 ヘルペスは「水ぼうそう」の再感染と考えられていますが、発病に至るには、加齢や過労、ストレス、紫外線などが重要な因子といわれております。
 水疱がひどくなる前に抗ウイルス剤(1984年より日本では発売された)の軟膏を塗布すると痛みが和らぎますが、水ぶくれの状態がひどくなると、軟膏を塗るとかえって水疱を破ってしまい、下着を汚してしまうというひどい結果になりますので必ず皮膚科・痲酔かあるいはペインクリニックを掲げている病院でみてもらってから軟膏類の使用の是非を相談してください。
 若い人は比較的早く治りますが、60才以上になりますと、神経痛や内臓疾患等の後遺症を残しやすいので、早期に抗ウイルス剤の注射や内服薬を処方して痛みを軽減してもらいましょう。桂枝や茯苓の入った漢方薬も水疱を早く乾燥させる効果があります。2週間たっても神経痛がとれない時には神経ブロック(神経の周辺に局所麻酔剤を浸潤させて痛みを一時的に取り去る方法)を繰り返し行ったり、低周波を当てたりする治療が必要となります。ハリ(鍼)治療・灸も有効です。
 とにかく、水疱が自然治癒する1ヶ月間に以下に神経痛を小さくしておけるかで以後のQOL(うまく生活できるかどうか)に影響を与えること甚大ですので、早く専門医にご相談ください。

平成4年10月  田中重三


夏の皮膚病その1

 夏の代表的な皮膚病は、小児のとびひと水いぼです。
 とびひは伝染性膿加疹とも言って鼻、耳たぶ、手足の水ぶくれが破れてジクジクとしたビランとなります。ここに、化膿菌である黄色ブドウ球菌を多数含む汁がついており、この汁が体のあちこちにとびひして感染するので「とびひ」の名前があります。とびひになったら殺菌石けんで行水やシャワーをして汗や垢を落とし、皮膚を清潔に保ちましょう。手はきれいに洗い、爪をよく切って、なるべく掻かないようにしましょう。
 食べ物は何を食べてもかまいません。
 つけ薬だけでなく痒み止めや抗生物質の内服が必要ですから、早めに専門医の正しい治療を受けましょう。
 水いぼは伝染性軟属腫とも呼ばれ、直径1~5mmの水っぽい粒が多数発生し、強く摘むと中から白っぽい塊が飛び出し自家接種して拡がり、他人にも移ります。
 予防、治療のために次のことに注意しましょう。
①アトピー性皮膚炎の小児は痒いためよく掻くので、アトピーのない小児より水いぼが拡がりやすいのです。普段からアトピー自体をよい状態にしておきましょう。
②温水プールの中には水いぼウイルスが多数います。またプールサイドで子供達が触れ合って遊ぶため、プールでよく感染します。自分のタオルは他人に貸さず、プールから上がるときは十分シャワーを浴びてください。水いぼにかかったらもちろんプールには行かず、早めに医師の治療を受けて下さい。

平成4年7月  鈴木裕介


夏の皮膚病その2(水虫について)

 足の水虫は、冬の間活動が鈍っていますが、夏が近づくと白癬菌が活発に増殖し、指と指の間がむず痒くなったりジクジクしたりします。この状態を放っておくと、指の間から別の菌が侵入して片足全体がパンパンに腫れ上がることがあります。
 予防としては、素足のサンダル履き、または指にガーゼを挟むか5本ゆびの木綿の靴下を履くなど、足の通気性をはかり、シャワーなどで足を清潔に保ちましょう。
 また、水虫の軟膏をつけるときには、薄く、病巣を含めた広い範囲にすりこんでください。(正常に見える周囲の皮膚にも白癬菌はついています。)
 足の裏に小さい水疱が集まって、痒くて掻くうちに白い膜がむけてくるタイプは、つけ薬を根気よくすり込むことで治ります。しかし、次に述べるタイプはつけ薬だけでは不十分で、水虫に対する抗菌剤の内服をする必要があります。
①足の裏が全体にゴワゴワと厚くなるタイプ(角化型白癬)
②足の爪の水虫(爪が透明でなくなり白く濁り、分厚くなるタイプ)
③ゆびの間の皮膚が赤むけとなり(びらん)、ジクジクとするタイプ(ここに水虫のつけ薬を直接塗るとカブレを生じかえって悪化するので、まず乾燥させる治療からはじめます。)
 このような場合は、水虫の内服薬が必要ですので、専門医にかかられるようお勧めします。

平成4年8月  鈴木裕介


アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎はアトピー体質(アレルギー体質)を持った子供におこる皮膚病と考えられています。アトピー性皮膚炎の特徴は乾燥肌でかさかさしていて、かゆみの強いことです。また何年もの間にわたって続く慢性の病気ですが、多くは乳児の頃に発病し再発を繰り返しながら思春期頃には軽快してくる場合が多いようです。
 この病気は、一定の年齢がくれば自然に治ってくることが知られていますので、それまでうまくコントロールしていくことが大切です。治療の基本的な考え方は、かゆみを取り除き、外部からの皮膚への刺激をできるだけ少なくすることです。このような観点から次のことに注意して下さい。
 1)入浴は制限せず皮膚を清潔に保つように心がけて下さい。入浴に際しては、石鹸をよく泡立てて、手や柔らかいタオルを使用して洗って下さい。また熱いお風呂は長く入っているとかゆみが強くなりますので、ぬるめのお湯か、ぬるいシャワーにして下さい。2)皮膚を刺激する羊毛品、セーターは直接皮膚に接触しないようにして着て下さい。3)日光浴が効果があるといわれていますが、長時間の日光暴露は避けて下さい。4)爪を切って手指を清潔に保つようにして下さい。5)かゆみが強いときは、かゆみ→ひっかき→皮膚症状悪化→かゆみの悪循環となるためお医者さんの指示にしたがって外用薬を使用して下さい。
 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎との関係が話題となりましたが、食物が関与する割合は、2歳以下で20%前後、2歳以上では10%前後と考えられています。食物アレルギーに関しては十分にわかっていないことも多く、発展途上にある赤ちゃんにとって卵や牛乳は栄養学的に貴重な蛋白源ですから、主治医の先生によく相談して正しい知識のもとに食事制限をすることをお勧めします。

原本平成3年5月  青井 努


疥癬

 家族全員の皮膚にかるいブツブツした発疹ができている時には、「疥癬」を疑いなさい、という格言が皮膚科医の間にあります。この疥癬は衛生状態の悪かった終戦直後に大流行し、その改善と共に日本から無くなっていました。しかし数年来、全国的に再び大流行がみられ、今治市でも多数の患者さんがいます。大人はもちろんのこと、中学生や高校生の間にも拡がっています。 「疥癬」とは疥癬虫という虫が人の皮膚に伝染し、皮膚の中に住みついて起こる病気です。疥癬中は、全身の皮膚のどこにでも住みますが、柔らかい部分の陰のう、指の間、脇の下などを特に好みます。粟粒から米粒位の大きさの赤いブツブツした発疹が、パラパラと出てきます。かゆみが強く熟睡出来ないことがあります。
 この「疥癬」の最も困る点は、非常に伝染力が強いことです。主に人と人との接触伝染ですが、布団や座布団を介してもうつる事があります。家族の一人に伝染すると、またたく間に家族中の者にうつります。寮などで集団発生する事もあります。自分一人にとどまらず、他人にうつして迷惑をかける困った病気です。
 発疹の一部をとって顕微鏡で見ると、気味の悪い形をした虫と楕円形の卵が見えます。 「疥癬」の治療には種々の方法があります。皮膚科医に相談し、適当な治療を行えば必ず治ります。その際、まわりの「疥癬」にかかっている人全部が、同時に治療するのが大切です。

  昭和61年4月  徳丸伸之


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