眼科


加齢黄斑変性症

 今回は最近、新聞やCMで取り上げられている「加齢黄斑変性症」についてお話します。 網膜はカメラに例えるとフィルムにあたる部分です。網膜の中心部分を黄斑といい、視力に最も大事な場所です。この部分に異常が発生すると、視力の低下を来します。加齢黄斑変性症は黄斑の機能が障害される疾患です。
 主な症状として、物がゆがんで見えたり、視力低下や中心部分が暗く見えたりします。
 患者は男性の方が多く、年齢が高くなるにつれ増加し、両目に発症する割合も高くなっていきます。また、喫煙者に多くみられることが報告されています。欧米で多い病気でしたが、加齢や生活習慣の欧米化に伴い日本でも患者数が増加しています。日本では、視覚障害の原因疾患の第4位です。
 検査は、視力・眼底検査・造影検査などです。 造影検査とは、造影剤を腕から注射し、眼底の血管の状態を検査します。治療法としては、 ①薬物治療(抗VEGF剤) ②光線力学的療法 ③レーザー光凝固があります。大きさや場所により治療法が変わりますが、現在、最も有効な治療は、 ①の薬物治療で、目に注射することにより新生血管の成長や漏れ出る血液中の水分を減らすことができます。
 加齢黄斑変性に限らず、加齢による目の病気は、早期発見、早期治療で進行を抑えることができます。
 毎日を元気に楽しく過ごすためにも、40歳を過ぎたら定期的に片目での見え方をチェックし、何か異常を感じたら早めに眼科専門医を受診してください。

平成26年2月 寄井 真理子


緑内障の早期発見のために

 猛暑のなか、ついつい家の中にこもりがち。オリンピックや野球の見過ぎで疲れた目を一度チェックしてみませんか。目の病気の中で意外と知られていないのが緑内障です。緑内障は日本人には非常に多く、40歳以上の20人に1人は緑内障といわれています。そのうち、8〜9割の方が緑内障の治療を受けていません。緑内障は、放置しておくと徐々に視野が消失し失明してしまう恐ろしい病気です。早めに発見し早めに治療すれば病気の進行を抑えることができます。一度失われた視野は取り戻すことができません。40歳を超えた方は一度眼科受診をお勧めします。
 ここで自宅でできる簡単なチェック方法を記載します。まず、壁の中心を決めて手で片目を隠します。壁の中心を見つめて見えにくい場所がないか探します。同じことを反対の目でも行います。日常、両目で物を見ていると視野欠損があったとしても見過ごされがちです。時々、片目で物を見る習慣をつけてみましょう。

平成24年10月 寄井秀樹


ドライアイ

 痛ましい大災害がおこり、節電の必要性を思い知りました。しかしテレビやパソコン、エアコンに囲まれた日常生活。新聞を読んだり書類を書いたりしないで過ごせる日もありません。目が乾いた感じはありませんか。それはドライアイかもしれません。
 健康な人でも年齢とともに涙の量は少なくなりますし、コンタクトレンズやアレルギー性結膜炎もドライアイと深い関係があるといわれています。涙は眼球表面(角膜((くろめ))や結膜((しろめ)))を覆い、それを潤して目を守るバリアとして働いています。涙の量が減ったり、成分が変化してその働きが不十分になり、角膜や結膜が乾燥した状態をドライアイといいます。
 ドライアイというと「目が乾く」だけと思われがちですが、目の不快感や疲れ、ごろごろするなどの症状もあらわれます。症状が強かったり、長引く場合は、感染をおこしていたり、ほかの病気が隠れている可能性がありますので、必ず眼科を受診してください。
 ドライアイの治療は目薬を点眼することが基本ですが、涙点プラグを入れて涙の排出を抑えたり、フード付きのメガネをかけて眼球表面からの涙の蒸発を防いだりします。また、生活を見直すことも必要です。パソコンやテレビの画面は見下ろす位置に置きましょう。エアコンの風向きや湿度もチェックしましょう。意識してまばたきをし、こまめに目を休めることも重要です。目を酷使する毎日です。少しでも快適にお過ごしいただければと思います。

平成23年12月 大植敬子


目とお化粧

 男性にはあまり関係ないお話です(最近はそうでもないかもしれないですが…)。 アイシャドー、マスカラ、まつげパーマ、まつげエクステンション、カラーコンタクトレンズいろいろありますね。
 眼科で診察をしていて心配になります。マスカラの繊維やアイシャドーの粉が目に入って角膜(黒目)に傷がついている方がいます。
 最近、まつげパーマやまつげエクステンションでのトラブルがあると新聞でも取り上げられていました。
 カラーコンタクトレンズで角膜(黒目)に傷ができて受診される方もいます。
 どれも危険です。目のお化粧は気をつけないと角膜(黒目)の傷からばい菌が入って、最悪の場合は失明につながります。
 美しくなるためのお化粧で失明したら悲しいことになります。美しくなった自分の姿を見ることもできません。日常生活も不自由になります。
 清潔にお手入れされた目が一番美しいと思います。目を触ることを怖がることはありません。せっけんできれいに洗った手で、お顔を洗う時に、目やにはしっかり取り除きましょう。 清潔が一番のおしゃれ。

今治市医師会 廣川 順子


子供の近視のはなし

 日本人を含め、アジアの民族に近視が多いことは以前から知られていましたが、最近は生活環境の変化の影響からか、近視発症の低年齢化が進んでいるようです。近視になってもメガネかコンタクトレンズを使用すれば見えるわけですから「病気」ではないという考え方もできますが、できれば子どもを近視にさせたくない、また、すでに近視になっていても度を進ませたくないというのが親心のようです。
 まず、近視の原因は何でしょうか。近視になるメカニズムは解明されつつありますが、はっきりとした答えはまだよく分かってはいません。両親が共に近視であれば子どもも近視になりやすいといった報告もありますが、そういった先天的な要素よりも、後天的な環境の要素のほうがより多く影響していると考えられています。環境要素というのは、勉強・読書・テレビ・パソコンなど目への負担です。近い距離で細かなものを長時間継続して見れば見るほど負担は大きく近視になりやすいといえます。ここ数年で変わったことといえば、携帯電話や小さなゲーム機器が広く普及したことでしょうか。小さなゲーム機器は特に目への負担が大きいため、近視発症低年齢化を加速させている可能性が高いのではないかと思います。
 近視を予防あるいは進行させないためには、姿勢を正して目との距離を30センチメートル以上離すようにしましょう。そして長時間続けないこと。ゲームであれば40分以上は続けないようにしましょう。目を休ませることが大事ですが、意識してピントを遠くに合わせることがより効果的です。近視においても早期発見・早期治療はとても大切です。学校の視力検査でA(1.0以上)であったとしても安心できません。すでに近視となり、視力が下がってきている途中の可能性もあります。視力低下が疑われたら、なるべく早く眼科を受診して検査を受けましょう。近視の度数が少なければ、あるいは視力が下がり始めてからの期間が短ければ短いほど、治る可能性が高いものです。家の中に目安になるもの(簡単な視力検査表、カレンダーなど)を張っておき、定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。

平成20年8月 正岡佳樹


眼底健診でわかる病気

 最近は予防医学の考えから、病気にならないうちにからだの異常を早く発見して健康を保つよう、市民健診や職場健診を受けられる方が増加しているようです。健診では眼底撮影をする事が多いのですが眼底写真からどのような病気がわかるのでしょうか。
 眼底検査の結果の欄には、まずH とS の文字の横に0~4の数字があります。Hの数字は高血圧による眼底の変化の程度を示し、Sの数字は動脈硬化性の眼底の変化の程度を示します。0は悪い変化がなく、1はわずかに変化があるものの正常範囲と考えられる程度です。2から数字が大きくなると異常の程度がひどくなり、4は最も進行していることを示します。血圧が高い状態が続くと眼底の血管の太さに変化が現われ、もっと血圧が高くなると出血したり、目の奥の神経が腫れたりします。血圧が下がれば徐々に出血や腫れは無くなりますが、血管の変化は一度起こってしまうと戻らない場合もあります。動脈硬化性変化は血管が固くもろくなるもので、進行すると血管が切れて出血したり詰まったりします。長年の積み重ねの変化ですので進むと元には戻りません。眼底の血管の変化は全身の血管の変化とも関連づけて考えられ、脳や心臓の病気の予防の参考になります。
 健診結果には、そのほかにも目の病気が疑わしいときはその病名や状態が記入されていることがあります。例えば視神経乳頭陥凹(緑内障の疑い)とか網膜出血(網膜静脈閉塞、糖尿病網膜症)などです。その場合は、せっかくの早期治療の機会かもしれません。放っておかずに眼科で検査をして、もし必要なら治療を受けましょう。

平成19年5月 田窪 一徳


アレルギー性結膜炎(花粉症)

 春は心弾む季節。のはずですが、くしゃみ、鼻水、目のかゆみで悩ましい季節という人も多いのではないでしょうか。そう、花粉症です。2~4月に猛威を振るうスギ花粉によるものがその代表です。目に現れる症状がアレルギー性結膜炎です。結膜は、瞼の裏側と白眼の部分を覆っている膜で、眼の表面を守っています。アレルギーの原因となる花粉が入ると免疫反応が起こります。本来は外界からの異物を排除するプラスの働きをする機能ですが、時に必要以上に敏感に作動し、人を苦しめるマイナスの働きをしてしまいます。これがアレルギーです。
 花粉が結膜にくっつくと、好酸球という細胞が過剰に反応して、ヒスタミンという化学伝達物質が大量に分泌されます。このヒスタミンがアレルギーの諸症状の主因です。結膜表面に存在する神経を刺激して「かゆみ」を引き起こします。さらに血管に作用し血管壁をゆるめるため、「結膜の充血・浮腫・まぶたの腫れ」が生じます。また、アレルゲンを排出するため、「涙・目やに」がたくさん出ます。
 治療には、抗アレルギー作用をもつ目薬を使います。ヒスタミンの分泌を抑えるものと、ヒスタミンの作用を阻害するものがあります。患者さんの状態に合わせて処方します。発症が予想される2週間ほど前から目薬をつけ始めることで、症状の出現を予防したり、軽くしたりすることもできます。症状が強いときは、ステロイドを含む目薬が使われることもあります。効果は強いのですが副作用を起こすことがあるので、眼科医の管理のもと注意深く使う必要があります。
 予防対策としては、症状の出現しやすい季節にできるだけ花粉と接しないように工夫することが重要です。花粉が飛びやすい日は、なるべく外出を控え、外出するなら帽子やゴーグル型の眼鏡を着用するのが効果的です。外出先から帰宅したときには服についた花粉を十分に落としたり、洗濯物などを外に干すことを避けたりして、家の中に花粉を持ち込まないようにしましょう。幸い、今年はスギ花粉の飛散は少ないと予想されています。適切な対策と治療で乗り切りましょう。

平成19年3月 井出千鶴子


目の成人病としての緑内障

 最近の調査により、40歳以上の17人に1人が緑内障にかかっていることがわかりました。「目の成人病」と呼ばれるゆえんです。しかし、目の痛みや頭痛など、急に激しい症状があらわれる急性緑内障に比べ、徐々に進行する慢性緑内障が多いため、約80パーセントの人が気づかず、治療も受けていないといわれています。
 緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)の上昇にともない視神経が障害される病気で、ゆっくりと見える範囲(視野)がせまくなります。視野障害が進行すると、人や物にぶつかりやすくなったり、階段が降りにくくなったりと日常生活に支障をきたすようになります。眼圧が正常範囲であっても、視神経に障害をおこす緑内障があります。これを正常眼圧緑内障といい、日本人に最も多いタイプです。
 早期に緑内障を見つけるためには、眼圧を測定するだけではなく、視野や眼底などの検査が欠かせません。また、緑内障と診断されたら、高血圧や糖尿病と同じように、生涯にわたる治療と管理が必要です。緑内障は失明原因の上位にあげられていますが、治療を生活の一部としてつきあっていけば、恐れる病気ではありません。何より、早期発見と病気の管理、治療の継続が肝心です。あなたの大切な目を守るために、40歳からは1年に1回は検診を受けてください。

平成18年12月 大植敬子


小児の斜視と弱視

 赤ちゃんの視力は視機能が未発達のため、出生直後は光覚、生後6 か月で0.1くらいしか見えていません。そして、眼を使うことにより1 歳で0.3、2 歳で0.6、3 歳で1.0に達するといわれています。ところが、この大切な時期に斜視や、強い遠視や乱視、先天性の白内障のような病気があると、眼を使うことができないため、視機能が発達することができず、弱視に陥ってしまう可能性があるのです。
 斜視とは、物を見ようとする時に片眼は正面を向いていても、もう片眼が違う方向を向いてしまっている状態です。内に寄っている内斜視、外に寄っている外斜視などがあり、先天性のものもあれば、生後6 か月ころより現れるものもあります。常に斜視になっている恒常性の場合もあれば、時々斜視になる間歇性のものもあります。このような疾患を早期発見するために、3 歳児検診で、視力検査も取り組まれるようになりました。早期発見で早期治療が開始できれば、それだけ、視力発達予後がよいからです。
 ご家族は子どもの一番よき観察者です。子どもは見えない世界にすぐ順応できてしまうこともあり、見えないという症状を自分から訴えることはあまりありません。また、片眼だけの視力低下だと、なかなか周囲も気づくことができません。片眼つぶり、首かしげ、なにか気になる症状がある場合は必ず、早めに眼科を受診するようにしてください。

平成17年10月 笹谷有紀子


コンタクトレンズ眼障害

 今年4月よりコンタクトレンズ(以下CL)は、高度管理医療機器(不具合が生じた場合人体へのリスクが比較的高いと考えられるもの)に分類され、その販売に関する規制が強化されることになりました。メガネと違って直接角膜(黒目)を覆うようにつけるCLは、その誤った使用で目の健康を損なう事があるからです。
 今やCLは遠近両用、乱視用、カラー、使い捨てレンズなどさまざまなものが登場し、より手軽に、より便利に使えるようになり、中高生の装用者も増えています。しかし、その一方でトラブルも増加し、装用者の約10パーセントに眼障害が発生しています。その原因は、角膜の酸素不足、CLが直接触れることによる物理的障害、レンズの汚れ、感染、アレルギー、ドライアイなどです。
 酸素透過性の低いレンズを長期間使用すると慢性的な酸素欠乏により黒目の一番内側の内皮細胞が障害され、その数が減少してしまい元に戻ることができません。CLの装用は1日12時間以内にしましょう。また、手指や保存ケースの汚れ、まぶたや結膜にすむ常在菌により感染を引き起こす危険性が常につきまとっています。最近ソフトCLは2週間の使い捨てタイプが装用感も快適で人気がありますが、汚れやすいのが欠点でレンズの表面に菌が付着しやすく、感染症の多くはソフトLC使用者です。
 CLを作る場合は眼科専門医にまず、CLが使用可能な目かどうか、近視や乱視の程度、涙の分泌の状態などを調べてもらった上で処方してもらうようにしましょう。自分が使っているCLの種類、特性、消毒の仕方についてよく理解し、定期的な検診を受けながら自分の大切な目を守るように努めてください。

平成17年2月 村上真美


眼鏡について

 眼鏡は私たちの目を助けてくれる身近な道具です。しかし中には眼鏡が必須な場合もあります。例えば遠視や内斜視の子ども、目を紫外線から守らなければいけない病気がある人などです。眼鏡が治療として必要なのですから、眼科でしっかり検査をし、正しい眼鏡を正しく使う必要があります。
 必須ではなくても眼鏡をかけたほうが良い場合もあります。目は二つありますが、見えにくいほうの目は見ようとする努力をしなくなってしまうことがあります。見え方に大きな左右差がある場合、近視眼ではそれが長期になると近視が強くなり左右差がひろがることがあります。また特に幼い子どもでは弱視になることもあります。
 二つの目が同じ見えやすさにしておくために眼鏡をかけたほうが良いといわれています。大人では老視により眼鏡のお世話になる機会が多くなります。しかし、老眼鏡という名前のためか、抵抗を感じる方が多いようです。中にはがんばりすぎて目の疲れや肩こり・頭痛まで引き起こしていることもあります。足の補助機具として車や自転車を使うように、目の調節力補助の道具としてもっと仲良くお付き合いをしてみてもよいのではないでしょうか。
 目的にもよりますが、よく見える眼鏡が良い眼鏡とは限りません。楽に使用できる自分にあった眼鏡をぜひ持ちましょう。
 最後に子どもの目についてですが、幼い子どもは自分が「見えにくい」のかどうかの判断材料を持っていません。周囲の大人が気付いてあげる必要があります。3歳児検診や就学児検診も異常発見の数少ない大切な機会です。しかし弱視の場合、就学児検診での発見ではちょっと遅い…という声もあります。気になることは早めに検査してみましょう。ただし幼い子どもの屈折度数(近視・遠視の度数)は簡単には測ることができません。きちんとじっくり測りましょう。

平成16年11月 正岡 緑


糖尿病性網膜症

 現在のわが国では、糖尿病人口は約740万人と言われています。糖尿病は発病初期にほとんど自覚症状がなく軽視されがちですが、全身に合併症を引き起こす油断できない病気です。
 三大合併症の一つに「糖尿病網膜症」があります。目の奥には網膜というカメラのフィルムにあたる重要な膜があり、ここに多くの毛細血管が分布しています。糖尿病患者の血液は糖分を多く含み、粘性が高いため、毛細血管を詰まらせたり血管壁に負担をかけます。そのため網膜に酸素や栄養が不足し、眼底出血などの症状を示す「糖尿病網膜症」となります。糖尿病網膜症は血糖コントロール状態により進行具合は異なりますが、一般的に糖尿病を発病して10年で、患者のおよそ半分が合併していると言われます。また驚くべきことに、毎年3,000人もの人がこの疾病によって失明しており、現在わが国における成人の失明原因の第一位となっています。自覚症状が現れにくいことから、眼科を受診しないケースがあります。
 しかし自覚症状が出てからでは遅いのです。糖尿病と診断されたら自覚症状の有無にかかわらず必ず眼科で検査を受けてください。糖尿病網膜症の治療としては、内科的な血糖コントロールが治療の第一です。それとともに初期の場合、止血剤や血管拡張剤などの内服薬の投与を行い、進行とともにレーザー治療(網膜光凝固)を行います。この時期を逃さないことが治療のポイントとなります。重度の場合、レーザー治療に加えて、外科的な硝子体手術が行われます。網膜症やそのほかの合併症の予防は血糖コントロールが基本です。それには健康な人よりも一層健康的な生活をすること、すなわち自己管理が大切です。

平成16年10月 寄井真理子


目を大切にしましょう

 目は、直径約2.5センチメートルの小さなボール玉です。小さいけれど、すごくパワフルです。もしも、目がなかったら、どうでしょう。私たちの生活は、この小さい目に助けられているのです。一生のお付き合いです。いたわってあげなくちゃね。
 「眼鏡」は、自分の目を楽にしてあげるための目のお友達です。目医者と相談して自分に合ったものを使いましょう。もうひとつの目のお友達「コンタクトレンズ」は、特に清潔に扱ってくださいね。調子が良くても目医者で異常が出てないか診てもらいましょう。目は「ばい菌」に弱いのです。手遅れは、悲しいから。
 40歳前後から近くが見にくくなってくる老眼も、「老」と言うことばを忘れましょう。「目と長くお付き合いするために、目を楽にしてあげよう。」っていう感じでね。
 目が見えなくなる原因の第一位は、糖尿病によって起こる「糖尿病網膜症」です。目の奥が悪くなって見えなくなります。目が見にくくなってからでは手遅れです。よく見えていても「糖尿病」「糖尿病の疑い」と言われたら、目医者に行きましょう。目の奥の詳しい検査をする時は、瞳を目薬で大きく広げて検査をします。そうすると、「半日くらいは、まぶしい、近くが見にくい」という状態になります。目医者に行く時は、自分で車の運転をしていかないほうが安全です。
 生まれてからずっとお世話になっている目の変化を早く知って、大切にしていただきたいなと思います。

平成16年9月 広川順子


緑内障のおはなし

 緑内障。それは、古くから「青ぞこひ」と呼ばれてきた病気であり進行すると失明の恐れがある恐い病気です。どんな病気かというと、眼の中の圧力(眼圧)が高くなって視神経が侵され、視力が落ちたり視野(見える範囲)が狭くなったりします。そして、一度失われた視力や視野は回復しないため早期発見・早期治療が重要となってきます。緑内障による失明率が高い理由は、緑内障の種類にもよりますが末期にならないと自覚症状がほとんどないため、眼科受診が遅れることが最大の理由です。緑内障だからといって必ず失明するわけではなく、適切な処置により一生涯を通じて良好な視力・視野を保っている方が多数おられます。適切な処置とは、点眼治療はもちろんのこと、レーザー治療・手術療法などがあげられます。緑内障治療の原点は、眼圧を下げることにあります。日常生活で注意すべき点は、長時間うつむいて仕事をしたり、過剰に興奮することをできるだけ避けて下さい。食生活においては、適度な量であればアルコールやタバコ、お茶もかまいません。基本的には、肉体的・精神的ストレスをためずに日常生活を楽しんでいただければと思います。
 緑内障の治療は長期にわたるため、定期的に眼科受診するのは根気がいりますが、医師や家族の方と二人三脚で頑張っていただければと思います。

平成11年5月  寄井秀樹


目にあらわれる体の異常

 内科などに病気が目にも症状をあらわすことをこ存じでしょうか。目が見えにくくなって眼科を受診したら重症の全身病が見つかったといつこともあります。その代表的なものが糖尿病です。糖尿病は眼底出血をおこし、ひどいときには全く見えなくなってしまうことさえありますが、その他にも糖尿病から白内障が進行したり、糖尿病による神経の障害によって目玉ややまぶたの動きが悪くなったり、くろめにキズが入りやすくなったりします。特に眼底出血はある程度進行するまでは自分ではわかりませんが、症状が出たときにはもう治療がむつかしくなってしまっていることも多くあります。長く糖尿病で治療を受けておられる方や血糖のコントロールの思わしくない方はぜひ一度眼底検査などの診察をお勧めします。
 人間ドックで眼底検査を受けられたときには特に動脈硬化の程度や高血圧による血管のいたみ具合を調べます。眼底の血管にこれらの変化が強いと、心臓や頭の血管にも同じように変化が進んでいると考えられ、血管が切れたり詰まりやすくなっていますので注意が必要です。
 このほかに眼底検査で異常があらわれるものには緑内障などの目の病気はもちろんのこと、脳の病気、膠原病などもあります。また甲状腺の病気で目玉の動きが悪くなったり、へルペスいう顔のできものから視力が落ちたり、鼻のちくのうが視力に影響を与えたりすることもあり、眼科は他の科の病気と深い関係があります。体の病気に関連してあらわれる目の異常を集めた辞典がいくつかできているほど目は体から影響を受けることが多いところです。めに気になる症状がある方は体の病気のあらわれかもしれません。一度主治医の先生や眼科医に相談されてはいかがでしょうか。

平成8.9.  田窪 一徳


目薬のさし方

 目薬の正しいさし方はあまり知られていないように思います。眼科から出される薬のほとんどが目薬ですから、きちんとさしていただかないと目的とする治療効果が得られないこともあります。
 「手をよく洗い、顔を少し上に向け、下まぶたを軽く引き、そこへ目薬を1滴落とします。2~3回まばたきをした後、1分間ぐらい目を閉じます。あふれ出た目薬は、清潔なガーゼやティッシュで拭き取ります。」
 異常が標準的な目薬のさし方ですが、少し解説を加えます。角膜(いわゆる黒目)に目薬を落とすと刺激で涙が分泌され、目薬が薄まってしまうことになりますので、下まぶたに落とすのがよいでしょう。目薬を入れた後にまばたきを何度もすると、そのたびに目薬は涙といっしょに目頭にある小さな孔(涙管)から鼻にぬけていきますから、なるべくまばたきをしないで静かに目を閉じておくことです。目頭をしばらく指で軽く押さえておくのも効果的です。また、目薬は1滴入れれば十分で、それ以上入れても流れ出てしまうだけです。目薬で目のまわりがかぶれることもありますのでこぼれた分はふき取ってください。目薬が不潔にならないよう、容器の先がまぶたやまつげに触れないようにすることも必要です。
 主な注意点をあげましたが、もう1つ頭に入れておいていただきたいことがあります。それは、目薬の全身的な影響です。目薬は涙管を通ると鼻の粘膜から吸収され全身にまわります。たかが目薬と思われるかもしれませんが、中にはその効果を上げるために非常に高濃度な目薬もあります。特に緑内障の薬の中には心臓や呼吸器系などに重篤な副作用を起こすものもありますので、回数はきちんと守ることが大切です。
 最後に、2種類以上の目薬をさす場合には、それぞれの効果を出すために5分間以上間隔をあけることが望ましいということを覚えておいてください。

平成7年6月  正岡佳樹


黒いものが飛ぶ「飛蚊症」

 目の前に、細かいごみくずの葉なものが見える症状を飛蚊症といいます。目の前を蚊が飛んでいるように見えるという意味ですが、これは眼球の硝子体というところに濁りができ、その影が網膜に写るためにおこります。
 中高年になって、突然飛蚊症を自覚した場合には、その原因が何であるかを、なるべく早く眼科で調べてもらいましょう。飛蚊症の原因には、放置しておいてもよいものと、早期に治療が必要なものとがあるからです。
 放置しておいてもよい場合は、飛蚊症の原因として最も多く見られる後部硝子体剥離で、硝子体の年齢による変化でおこります。これは、治療する必要がないので、あまり気にしないようにしましょう。ただし、後部硝子体剥離に引き続いて起きてくる可能性のある網膜穿孔(網膜の穴)があるかないかを、きちんと検査してもらっておく必要があります。網膜穿孔は早く見つければ、光凝固療法で網膜剥離を防ぐことができ、眼球にメスを加えなくてすみます。
 網膜穿孔の他に、硝子体や網膜の出血、ぶどう膜炎等も飛蚊症の原因となります。
 以上の様に、中高年になってからの飛蚊症には、おそろしい病気があることを知らせるサインの時と、全く心配のない時とがあり、早く眼科医の精密検査を受けて、その区別をしてもらうことが大切です。

平成2年10月  村上真美


糖尿病性網膜症

 糖尿病になると、白内障、眼筋麻痺など色々な異常が出てきますが、糖尿病性網膜剥離症による失明が一番深刻です。現在、欧米では成人の失明原因の第一位です。我が国でも上位になりつつあります。これは医療の進歩によって糖尿病の治療成績が上り、糖尿病にかかっている時期が長い患者が増えているためです。糖尿病患者の全部が網膜症を持っているかと言うと、発病年齢、病気にかかっている期間、コントロールの善し悪しなどによって変わってきますが、大体、糖尿病患者の約半数に網膜症が発生していると考えて良いと思います。
 網膜症には、たちの良いものと悪いものがあります。良性の網膜症は出血や浮腫(むくみ)が出て、増えたり減ったりを繰り返して、少しずつ進行していくものと、一方、新生血管が発生して増殖し、進行も速く、失明の危険性が大きい増殖性(悪性)の網膜症があります。そうならない前に、良性と悪性の間に前増殖性網膜症があり、この時期を逃さずに治療しなければなりません。前増殖性網膜症を診断するのは、蛍光眼底撮映という動的に網膜の血管を調べる必要があります。そしてこの前増殖性網膜症の時に光凝固治療を行います。さらに病状が進行し、眼球が出血で満たされたなど手遅れになった場合でも硝子体手術があります。しかし、手術が必要ないよう糖尿病のコントロールに絶えず努め、定期的に眼底検査を受けるのが何より大切です。

   昭和62年2月  高木幹男


目の老化現象

 眼の老化現象で、先ず最初に気付くのは老眼です。近くが見えにくいと感じたら老人でないと思っている人も、次に述べる病気に要注意です。
 多いのは、白ぞこひと言われる白内障です。初めは異常を感じませんが、進行すると瞳のところにある水晶体が濁ってきて視力が低下します。濁った水晶体を手術で取り除き、代わりにメガネやコンタクトレンズを装用するか、眼内に人工水晶体を入れると、再びよく見えるようになります。
 青ぞこひというのは緑内障のことで、眼圧が高くなった状態です。徐々に進行する型と急激な眼痛発作を起す型とがあります。緑内障で悪くなった視力や視野は、手術でも回復せず、悪化するのを防ぐだけです。
 目の前を虫が飛んでいるように感じる(飛蚊症)時は、後部硝子体剥離や生理的飛蚊症など心配ないものから、硝子体出血や網膜剥離という失明することもある恐ろしい病気の初期のことがあります。糖尿病や高血圧、動脈硬化があると、血管が悪くなって網膜症や網膜静脈血栓症などの、いわゆる眼底出血を起します。これらの場合や網膜剥離の初期では光凝固が有力な治療手段となります。
 涙が少なくなると乾燥感だけでなく、黒眼に傷がつき、異物感や痛みも出てくるので(乾燥角結膜炎)、人工涙液を点眼します。反対に涙が鼻の方へ抜ける道が狭くなったり、道は通っていても通路へ涙を引き込む力が弱って、流涙が起こることがあります。
 以上述べた病気は、素因の差はあるものの、老化現象をその基礎に持っているため、根治することはありません。眼科医を相談役に、大事に至らぬよう、上手に付き合っていくことが大切です。

昭和60年11月  松田久美子


白内障(しろそこひ、うみぞこひ)

 眼の「ひとみ」の後ろにある透明な水晶体(カメラレンズに相当するもの)が白く濁ってくる病気です。 レンズが濁ってきますので視力は少しずつ悪くなってきますが、充血とか痛みとかは全くありません。また伝染するものではなく、遺伝性のものではありません。 白内障にはいくつもの種類がありますが、一番多いのは「老人性白内障」で白髪や老眼などと同じような中年過ぎの老化現象です。
 初めは本などを読むと眼が疲れ、人の顔がぼんやり見えるようになります。次に視力がだんだん衰え、ものがはっきり見えなくなり、更に進行すると、眼の前にかざした手の指もわからなくなります。進行は人によってまちまちですが、急に進む場合もあり、またほとんど進行しない場合もあります。
 視力が0.1以下になると、治療は濁った水晶体を手術によって取り除く方法になります。約10年前までは、水晶体を取ってしまう方法しか行われていませんでした。そしてメガネやコンタクトレンズで、取り出した水晶体の代わりをして、良く見えるようにしていました。最近では、取り出した濁った水晶体の代わりにプラスチックやシリコンで作られた「人工水晶体」を挿入する、安全で安心出来る方法が盛んに行われています。すでに、過去に水晶体を取り出してしまって、いつもメガネやコンタクトレンズをかけて不便に思っている人には、角膜の上に人の角膜をのせて接着する「角膜レンズ」が研究され、実際に行われ好結果をあげています。

昭和61年6月  高木幹男


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