泌尿器科


尿管結石症について

 血液中で不要になった水分と老廃物は、尿として排泄されます。尿は、腰あたりにある左右一対の腎臓でつくられ、尿管を通って下腹部にある膀胱にためられます。ある一定量たまると尿意を感じて排尿します。尿路に石ができることにより引き起こされる疾患の総称が「尿路結石症」です。
 部位により「腎結石症」、「尿管結石症」、「膀胱結石症」と呼ばれます。結石は、尿中のシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などが固まってできたものです。尿管結石症は、脱水ぎみになる6月から9月ごろ、20〜50歳代の方、男性に多い傾向にあります。症状として腰や脇腹、下腹部の激痛、嘔気、嘔吐、血尿や頻回の尿意などがあります。男性では陰嚢部痛を感じることもあります。
 多くの場合、結石により尿管が閉塞され、腎臓が尿で膨張して一時的に働きが鈍くなる「水腎症」になっています。小結石の場合、尿と一緒に排泄される可能性が高いので、鎮痛剤で対処しながら、経過観察することもあります。大きな結石や突起があるなどの形状、存在する部位によっては、体外から衝撃波を与えて結石を細かく砕いて尿から排出させる治療法や内視鏡手術での摘出などがあります。痛みのある時の水分摂取ですが、無理して摂取する必要はありません。排石後は結石形成の予防のために水分を多めに取ることは必要です。似ている症状で、腎臓の血管が詰まる腎梗塞などの生命にかかわる病気の場合もあり、尿路結石症と思われる症状が現れたらすぐに泌尿器科を受診してください。

平成26年11月 黑光浩一


女性の膀胱炎について

 女性の急性尿路感染症、特に膀胱炎は泌尿器科外来診察でよく見かける病気です。
 膀胱炎を起こすと排尿時に痛みがあったり急におしっこの回数が多くなる、あるいはおしっこが出きらず残っているような感じがあったりします。また腰の痛みや下腹部の不快感を訴える人もいます。
 その原因は、ほとんどの場合が大腸菌を主とする腸内細菌によるものです。
 最近は細菌を殺す力が強くまた一度にいろいろな種類の細菌に対してその力を発揮する薬が広く使われています。そのため膀胱炎などの急性尿路感染症の場合の薬を飲み始めると数回の内服で症状の改善が見られ、そのまま様子を見る人も多いようです。しかしその結果、基礎疾患の十分な検索がなされず何回も膀胱炎を繰り返しそのつど薬だけで済ませる人が見受けられます。逆に女性の場合は尿検査時に外陰部での汚染から見かけ上の膿尿(尿の中に膿が混じっている状態)になりやすいため、きちんとした治療判定がなされず無意味に長期投与が行われる場合も見受けられるようです。
 いずれにしても1年間に何回も膀胱炎を繰り返したりあるいは治りの悪い人は少なくとも一度専門の先生に診てもらうことをお勧めします。
 膀胱炎にかかりにくくするにはおしっこを我慢せず、十分に水分を取り、外陰部を清潔に保つことも大切です。
 また、膀胱炎自体では高い熱が出ることはありませんが、膀胱炎の症状があり高熱をともなう場合は腎臓にまで細菌が感染した可能性があります。この場合は急いで十分な治療を行う必要があります。

H13年7月 篠原 敏


血尿と泌尿器疾患について

 血尿とは尿に血液がまじって濁ることですが、これは腎臓、膀胱、尿道のいずれかの部位からの出血を示す異常な状態です。出血が少量の場合は、尿の外観は正常ですが顕微鏡検査で尿中に多数の赤血球をみとめ、顕微鏡的血尿といいます。これに対して、尿の外観から血液の混入がわかるものを肉眼的血尿といい、その程度によって淡赤色、濃赤色さらに暗赤色、さらにひどくなると血液の塊が混じるようになります。
 普通肉眼的血尿をきたす疾患で日常的にみられるものでは、頻尿、排尿痛を伴う膀胱炎、膀胱結石、わき腹の激痛後に血尿を来す腎結石、血尿結石があります。
 また一方で疼痛や排尿の異常などの自覚症状が全くなくて、血尿が唯一の異常所見である場合を無症候性血尿といい、むしろ、こちらの方が重要な原因疾患を秘めている場合が多いです。特に中高齢層に出現した場合は膀胱癌、腎臓癌などの初期症状である可能性が強いのです。例えば、膀胱癌の場合ですと(中高年の男子でヘビースモーカーに多い)初期のうちは肉眼的血尿があっても数日で血尿は消失し痛みもないため、放置しているうちに再び血尿を来し、数ヵ月、数年のうちに頻尿、排尿痛を伴うようになり治療も次第に困難となります。腎臓癌でも痛みや、腎の腫大を来すようになると根治手術が困難です。
 異常の様に、無症候性血尿では病気の早期発見のため、くわしい泌尿器科的検査が是非必要です。 

 昭和62年9月  今井達二


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